あっという間に10月。今年もあと2ヶ月となりました。
10月といえばストレスチェックを行う会社が一番多いといわれているのもこの時期です。
ストレスチェックとは、従業員50人以上の事業所に対して年1回以上の実施が義務付けられているメンタルヘルスケアの一つです。労働者自身が自分の状態を理解することや、会社としては職場環境の見直しのきっかけにつながります。
会社で義務化されているとはいえ、提出をしなかったり、提出してもよく読まずにチェックをしている方も少なくないのではないでしょうか。
コロナ禍の緊急事態宣言による生活環境の変化を経験して数年。現在はだいぶ日常生活への直接的な影響は少なくなってきましたが、私たちはこの数年、多くの生活変化や社会生活の制限を受け続けてきました。コロナ禍を経験した私たちだからこそ、ストレスチェックを有効活用して欲しい理由があります。
目次
コロナ禍から数年経過した今だからこそストレスチェックを有効活用して欲しい理由
・コロナ以前と比べ不安や抑うつの有病率は倍以上に増加
コロナ禍による外出制限や、感染症やワクチン、治療など未知のものと向き合っていく不安や緊張感などは多くの人に精神的な影響を与えました。海外においても不安や抑うつの有病率は多くの国で増加しました。
・気付かぬうちに過剰適応状態に
過剰適応とは、自分がおかれた環境や周囲の期待にこたえようとし、自分の考えや行動を必要以上に調整してしてしまう状態です。コロナ禍では、感染対策やソーシャルディスタンスの確保、テレワークなど働き方の変化や、日常生活が急激に大きく変わっていくなかで、どの人もそれに合わせた行動をとることが求められました。その状態が長きにわたったことで、自分では気付かぬうちに過剰適応の状態となっていた方が少なくありません。日々の生活の中で不安や緊張感が常態化していたなか、私たちは、マスク生活、手洗いの徹底、ソーシャルディスタンス、職場での体調管理などをしてきました。またそれは過去のことではなく現在もその状態が一部では続いていることもあり、過去のこととはまだいえません。
・過剰適応がつづくことで生じる問題
過剰適応が続くと、以下のような問題が生じる可能性があります
- 睡眠障害や自律神経の乱れ
- 不安や心身症の発症リスクの増加
- うつ病やパニック障害などのリスクの増加
気づくことが遅れることで身体への影響が強くなり、それが悪化してしまうと働くことが困難になったり社会生活へ影響が出てしまう場合もあります。
・ストレスチェックはメンタル面での健康診断と同じ
ズバリ、わかりやすくいうとストレスチェックは健康診断と同じです。健康診断というとイメージしやすい方が多いのではないでしょうか。ストレスチェックも健康診断も大きくみると目的は同じです。
ストレスチェックの目的
▽個人に対しては
- 健康上の不調を未然に防ぐ
- 健康上の不調を早期に気づき、重症化を防ぐ
▽会社に対しては
- 従業員の心理的な負担を測定し、精神的不調に直面する可能性のある従業員を早期に発見することができる
- 職場環境の改善につなげる
身体的な問題も、メンタル的な問題も、早期に気づくことがその後の回復も早めることは言うまでもありません。
ストレスチェック後のフォローも必ずセットになっている
ストレスチェックの制度はその後のフォローまでが制度化されています。具体的には以下の通りです。
- 高ストレス者と判断された従業員のうち希望者は産業医面談を受けることができる
- 産業医面談ではより具体的に心身の状態を相談することができ、適切な対応などについてアドバイスを受けることができる
ストレスチェックの結果が会社の管理や人事担当などにむやみに伝わることはありません!
ストレスチェックに本音を記載すると上司や会社にバレるんじゃないか、という不安から本音をかけないという声を時々耳にしますが、ストレスチェックは原則ストレスチェックの実施者(産業医または保健師、看護師等)から直接本人にのみ通知されるため個人結果が会社側に通知されることはありません。本人の同意なく会社側に個人結果を提供することは法律で禁止されています。ただし、医師との面談指導を希望する場合は、その申込時に会社側に開示する必要のある場合がありますが、知られたくない場合などはその意向も踏まえて産業医や担当者に事前に相談することをおすすめします。また、産業医による面談指導の結果、休業や就業制限などの措置が必要と判断された場合は、労務管理の観点から会社に共有されます。
ストレスチェックが会社にない場合に個人で活用できるツール
ストレスチェックは従業員50人以上の事業所に義務付けられている制度ですが、その対象から外れているなどでストレスチェックが会社で受けられない場合は以下のツールを利用されることをおすすめします。
「こころの耳」は、厚生労働省が運営する働く人のためのメンタルヘルス・ポータルサイトです。働く人やその家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者向けに、メンタルヘルスに関する情報を知ることができます。
リンクに貼ったストレスチェックだけではなく、電話やメール、SNSなどでの無料相談のサービスなども受けることができます。厚生労働省の運営なので安心して利用できますね。
健康はかけがえのない資産!健康診断と同様、年1回のストレスチェックの機会も大事にしよう!
・メンタルヘルスも健康資産の一つ
近年、健康資産という言葉をよく聞くようになりました。健康は個人の経済活動にも大きく影響するという意味です。メンタルヘルスも同様で、健康の定義に含まれる大事な要素です。定期的にチェックとして必要な場合には適切なケアを早期に受けましょう。
・近隣の心療内科の予約がすぐにとれない場合は、オンライン診療を活用しよう
コロナ禍で急速に拡大した分野にオンライン診療があります。患者の増加に伴い最近は心療内科の初診の予約が2〜3ヶ月後という状況も珍しくはないなか、心療内科のオンライン診療が受けやすくなりました。一部処方の制限はありますが、スマートフォンアプリなどで予約から決済までスピーディーに対応できることが大きなメリットです。また、早めに会社に休業の診断書を提出したい場合にも利用しやすいのではないかと思います。仕事の隙間に診察を受けられたり、薬も自宅まで郵送してくれるところもあります。診療方法の選択が広がったことは、受診時間を見つけることが難しい会社員にとっては大きなメリットです。
ストレスチェックは会社の負担で受けられるメンタルヘルスケアの一つです。チェック項目も多く、面倒に感じる時もあるかもしれませんが、健康診断と同様、ご自身のこころの健康を図るツールとしてぜひ適切に利用し、こころの健康に繋げましょう。